読書な日々【ネットvs.リアルの衝突】

急速に進化するネット世界と従来型社会システムとの歪みを問いかける。しかしサブタイトル「誰がウェブ2.0を制するか」については全く不明。

ネットvs.リアルとありますが、著者は全11章のうち6章までをWinnyに当てている。インターネットの理想としてのP2P、ファイル共有ソフトの誕生からWinnyの登場、Winny作者の逮捕と実刑判決、そしてWinny経由での情報流出。「ネットvs.リアル」という対立軸で言えば、ネット上での違法ファイルの流通に対して有効な対処のとれない当局が、共有ソフトの作者を検挙という裏技に出たってところでしょうか。

後半は標準化問題、オープンソース、IPアドレス管理などに触れながら、インターネットを統制しようとする諸勢力のことに言及しています。と言っても、NEC PC98シリーズがIBM PC/AT互換機に駆逐されたこと、国産OS TRON計画が頓挫しWintelが如何に覇権を手にしたか、IPアドレスを巡る各国のせめぎ合い・・・など、ネットをとりまく世界情勢と言うことでしょう。

Winny判決については専門家ではないので是非はわかりませんが、P2Pのファイル共有を専ら著作権的に違法なファイルのやり取りにしか使用されていない現実の中では致し方ないかもしれません。逆に、Winnyによって浸透したP2Pの技術を如何に使うことが健全な発展の方向なのかを示唆して欲しかったと思います。また、後半部分に関しても、事例を上げるばかりではなく次の一手を考える布石になるものが欲しかったと思います。「ネットvs.リアル」と言えば、2ちゃんねるの管理人ひろゆき氏の裁判と強制執行の行方も気になるのですが、そちらについて触れられておりません。

ついでに。ネットとリアルを対立軸に捉えることに意味があるのかと思う。インターネットが急速に普及して10余年。メディアとしても無視できないものに膨れ上がり、光も影も次第に認知されてきました。そこで、ネットとリアルをどうリンクさせるのが上手いやり方なのか。著作権しかり、ネット犯罪しかり。さらにネットから収益を上げる有効な手段はないのか。その辺を掘り下げていく先に「ウェブ2.0を制する」答えがある気がするのですが。

「ネットvs.リアルの衝突」佐々木俊尚著/文春新書(2006年12月20日初版)

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