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読書な日々【リクルートのDNA】

たしかにリクルートはすごいんだろう、今後は知らないけど。

まず著者の江副浩正氏はリクルートの創業者にして、件のリクルート事件で有罪になった本人。事件がもとでリクルートを退職し、もう20年になるという。この本はリクルートの創業から江副氏の退任までの約30年を「人材」「企業精神」を核に回想する。最初の2章は江副氏の経営理念と経営感が、残りの6章がリクルートの成長を年代記風に追った回想録といった構成。

江副時代のリクルートの成功の秘訣は「人」をフルに活用したことにあると言えそうだ。
一つは社内スタッフの活用。学歴や性別・年齢に関わらずやる気と能力があるスタッフに大きな権限を与え、代わりに成果を要求する。これによりスタッフのモチベーション維持しビジネス感覚を研ぎすましていく。副題の起業家精神とはこの部分で、今風に言うと社内ベンチャーを立ち上げ社員が経営感覚を持つように誘導していく。
もう一つはコネクションを活用したこと。江副氏の学友には森稔氏(森ビル社長)を始め多数の経営者がいる。その他そうそうたる企業にもネットワークがあるのは彼が東大卒だからか。で、経営上の大きな転換点において、それは非常に有益に活用してきた。コネ以外にも社外との接触を積極的に行うことを推奨していたというのも興味深い。

一番の名言は「同業間競争に敗れて二位になることは、われわれにとっての死である」。基本的に情報誌ビジネスにおいては市場第一位が圧倒的に優位であるということ。あとはリクルートの目のつけどころが鋭いということか。就職情報誌から始まり、結婚情報や出産、住宅購入など、人生で何度もない大きな転機で且つ大金が動く時期は狙いめであると言うこと。

なお、一部の書評にあるような、リクルート事件の顛末に関する記述ほとんどはないことへの批判は的外れだろう、本書の趣旨とは異なるからだ。どういう所見で政治家・官僚に近づき利益供与に至ったのかについての言及は欲しかった気もするが、それを求めるのも酷な話だろうし、この著書で反省の弁は不要だ。

「リクルートのDNA ー起業家精神とは何か」江副浩正著/角川oneテーマ21(2007年3月10日初版)

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